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「愛している」と囁けば、
真っ赤になるそれを見て多分自分は、
楽しんでいるような気がする。



「ッ…もわかったから、ちょっと離せ」


腕の中で、一護が不機嫌そうな声で言う。
不機嫌そうな声ではあるが…、顔を見なくてもわかる。
たぶん一護は恥ずかしくて耳まで赤くさせている。
そこまでわかっていても俺はそれを離さない。


「何故?俺は離したくないんだが」


さらに腕に力を込めると、一護は観念したかのように、
微力ながらも俺の胸を押していた手のひらをきゅっと丸めて
着物を引っ張るように掴んだ。


「一護?」


ぐっと一護の耳に唇を押し付けて、そして名前を呼んだ。
一護はビクリと肩を震わせて着物を掴む力を強めた。


「だぁーっ!! それやめろっ!」


気に食わないことをされた猫のように、
ブワッと毛を逆立てるようにしてそう怒る。
しかしそれでも力いっぱい突き放そうともせず、
その手はただすがるように着物を掴んだままで。
それがなんとも可愛くて、愛おしい。


「一護、愛してる」


脈絡もなく囁く。それはいつものことだけれど。
そのたびに一護はギュッと全身を固くさせて
けして俺の顔を見ようとはしない。

意地が悪いだなんて、今まで言われたことはなかったけれど、
一護に触れて、初めて言われた。

少しだけ腕の力を弱めて、耳元に寄せた唇を離して、
一護の顔を見ようとした。
一護は俯いたまま、顔を上げない。
どうしたもんか、と少し考えて、
名案とは思えないけれど、一つ案が浮かんだ。
俺は一護の手をスッと退けると中腰になる。
そのまま顔を上に向ければ、一護の顔があった。
これで一護の顔は見れた。
案の定、顔は真っ赤で、俺がそれを面白そうに笑うと、
一護は子どものように俺を睨んだ。


「愛してる」


睨んでいた目がビクリと大きくなる。
そしてすぐに、その濃い琥珀色の瞳はそっぽを向いてしまう。


「一護は俺のこと嫌いなのか?」


不安げにそう呟く。
不安など微塵も感じていないと言うのに。
俺も卑怯な手を覚えたものだ、そう頭の中では自嘲を漏らした。


「そんなことあるわけねぇだろ…」


ややあって一護は小さく呟く。
にやけそうになる口元を必死で笑顔で取り繕った。
そして泣く子をあやすように、優しい口調で問いかける。


「じゃあ、愛してる?」

「…愛してる」


いい歳して大人げない、そういわれてしまえばそれまでだが、
それでも一護の口からその言葉が聞けるのであれば
なんだってしてしまいそうで。

中腰のまま、すこし背筋を伸ばしてそのまま拗ねる唇に唇を重ねた。
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