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当然のことのように
飲みかけの缶コーヒーを渡してくるから、
何気ない顔をしてそれを飲むけど、


「…苦い」

「そうか?」


本当は甘いような気がする。
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「で、その娘のどういうところがいいの?」

「照れ屋なところとか、可愛いな」

「照れ屋?」

「ああ、人前では、なかなか手も繋がせてもらえない。真っ赤になって拒む」

「そりゃあ、ちょっとシャイだねェ」

「あとは、なんだかんだ言って最終的に抱き締めさせてくれるところとか」

「ふふ、可愛いじゃない。で、どこまでいったんだい」

「あそこの甘味処まで。生クリームは意識してても頬に付くもんだな、
 あれも気付かず頬に付けたままで―――」

「そうじゃァなくてねェ、浮竹、どこまで進んだかって聞いてるんだよ」

「何が?」

「…。んー、もう一緒に寝たのかい」

「いつも一緒に寝てるが。あったかいぞー。何より寝顔が癒される。
 たまに俺の仕事が多く残ってて夜中まで書類を書いていると、
 俺の背中に寄りかかってくる。そりゃあもうかわいいったら―――」

「あー、浮竹に聞いたボクがバカだったよ。あれ、自分の隊の娘なのかい?」

「ああ、一護だけど?」

「…いちご? まさか黒崎一護かい?」

「ああ、そうだ。…どうした?」

「いいや、…なんでもないよ、まぁがんばんなさい」

「? ありがとう。ところでさっきの続きだが、
 一護のやつ、ああ見えて髪が柔らかいんだが―――」




「いつまで続くんだい浮竹…」
ポツリと浮竹さんが呟く。
オレは、繋いだ手に少しだけ力を込めた。


「一護?」


浮竹さんはオレの顔を覗き込んだ。
オレはなんとなく目をそらす。
そのあと一瞬間があって、
浮竹さんは面白そうに笑った。


「冗談だ」


馬鹿だな、
そう言って浮竹さんも、少し強く繋いだ手を握り返した。
「約束をしよう」


そう言って浮竹は長い小指を一護に差し出した。


「何を?」


唐突に出てきた 約束 という言葉に一護は
一体何を指して言っているのかわからず、
困惑した表情で浮竹の顔とその小指を交互に見た。


「何がいい?」


自分で約束をしようと言い出したくせに、
何について約束をするか決めてなかったのだろうか。
一護は浮竹の真意を探るように難しい顔をして
それを見つめたが、当の本人はきょとんと一護を見つめ返した。


「ほんとになんでもいいのか?」


浮竹は優しく微笑んで、「ああ」と返す。


「じゃあ、」


少し考えるそぶりを見せた後、
一護は浮竹の小指に自分の小指を絡ませた。
横たわっているのにグラグラと頭が揺れる。
寒いけれど熱い、夢のような現実のような、
区別のつかない感覚。
天井がゆがんで見える。
せめて眠ることさえ許されれば。
しかし発作的にこみ上げてくる咳に、
それすら拒まれてしまう。

咳き込むたびに跳ねる体が疎ましい。
汗で顔に張り付いた髪さえ
直すことが億劫で。







「一護…?」


なぜそうつぶやいたかはわからない。

もうここには居ないのに。
でもすぐそこに居るような気がして。

重い体を無理やり起こして、
縺れる足を無理やり動かして、
ふらつく頭を無理やり抑えて、
障子を開けた。

すると、
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