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「ああッさみぃ…上着着てくんの忘れちまった」


靴を履いて校舎から外へでると、
薄暗くなった外の気温は思ったより冷たく、
一護は自分で自分を抱き締めて息を吐いた。
さっさと帰るか、そう考えながら校門を出ると、
そこにはすぐ近くの電信柱に寄りかかって空を見上げる浮竹の姿があった。


「…きたけさん…」


目を見開いて息を飲み込むと、すぐにそばまで駆け寄った。
茶色いコートに身を包んだ浮竹は、一護に気付くと目を細める。
電信柱から離れ一護のほうへと向き直ると、
後ろで緩く結ばれた髪の毛が揺れた。


「なにしてんだこんなとこで」


恥ずかしさを紛らわすために一護はぶっきらぼうにそう聞く。
駆け寄ってきた一護に笑みをもらして、
浮竹は抱えていた黒い服を一護に渡した。
一護はそれを受け取りそして広げると、
それは浮竹のコートで、クローゼットと浮竹の匂いが鼻を掠めた。


「古いコートで悪いな。今朝お前が薄着で学校行ったのを思い出してな、
 散歩がてら迎えにきたんだ」


散歩がてら―、そういう割には
浮竹の手には冷たくなったホットの缶コーヒーが握られていて。


「ちょっとぶかぶかだな、コレ」


とりあえず一護はコートに腕を通してみたものの、
指の先しか袖口からでてこない。
なんともいえない表情で一護は袖口を見つめる。


「あったかそうでいいじゃないか」


なんとなくそれが気にくわなそうな一護を見て
浮竹は面白そうにくっと喉を鳴らす。


「ばかにしてんのかよ」


むっとして浮竹を目の端で小さく睨むと、
一護の好きな笑みを浮かべる浮竹がそこにいて、
威嚇するという目的をなくした一護の視線は宙を泳いだ。


「怒るなって。さあ、帰ろう」


そう言ってまだ冷え切る前の一護の左手をとると、
浮竹は自分の右手と一緒に、コートのポケットにつっこんだ。
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「そういえば、浮竹さん」


一護が思い出したかのように口を開く。



「なんだ?」



縁側に座ってひなたぼっこに興じていた浮竹が
のんびりと口をひらく。


「十三番隊の隊章って、なんの花なんだ?アヤメ?」


浮竹の隣まできてちょこんと座る。
風がないせいか、日差しがぽかぽかと暖かかった。
一護を見やりながら浮竹は一瞬、なんだったかなと考える。


「うちの隊の隊章…?…ああ、花菖蒲だ」
「花菖蒲?」


ぴんとこないのか一護は眉根を寄せて首をかしげる。
浮竹はぬるくなったお茶を一口飲むと、
一護に「まぁ、アヤメと似たような花だ」と説明した。


「花菖蒲、花言葉はたしか、"優しさ、優しい心、優雅"
 それから――……"あなたを信じる"」
「へぇ…あんたにぴったりな花だな」


感心したように一護が呟く。


「これは俺だけじゃなく、隊士全員…もちろん一護にも言えることだ」


俺はこの隊の隊長で居られて幸せだよ、そう付け加えると
目を伏せて微笑んだ。


「一護は、俺を信じてるか?」
「当たり前だろ」


そんな問いかけを微笑んだままの唇で紡ぐ。
なんとなく照れくさくて一護は目をそらした。
浮竹は目を細めると、コツンと、一護の額に額を重ねた。


「俺もお前を信じてる」






※原作では隊章が何なのか明かされてないので花菖蒲じゃなかったらごめんなさい
「離せ」

「離さない」

「…離せ」

「離さない」

「…離せよ」

「離さない」

「……離せ」

「愛してる」

「…馬鹿野郎」
「痛ッ…」


その声に怪訝そうに、浮竹は後ろを振り向いた。


「どうした?」


先ほどまでさらさらと紙の上を走っていた筆を置き、
浮竹は言いながら一護のほうへと向き直る。


「あ、いや、ちょっと指切っただけだから…」


苦笑をもらして一護は言う。
書類で切ったのだろう、畳の上には五、六枚、
先ほど一護にチェックを頼んだそれが丁寧に置かれており、
そして一枚――多分その紙で切ったのであろう――は
一護の右手に握られていた。

ふと、一護の左手の人指し指に薄くにじむ赤い筋が、浮竹の目に入る。
すっぱりと切れてしまったのだろう、そのために傷は目立たないが、
そういう傷こそ痛く、また痒くもあり面倒なのだ。
浮竹は何を思ったかすっと一護の左手首を取ると、
そのままその赤い筋が出来た人指し指を口に含んだ。


「な…」


一護は驚いて一瞬身を引こうとしたが、
しかし浮竹が手首を離さないため、なんとなく動くことができない。
浮竹は口の中で、傷口を重点的にペロペロと舐めると、一護の目を見つめた。


「…ッ」


指を舐められている、それだけで心臓が飛び出しそうなのに、
目など見つめられたらたまったものではない。
一護は自分の顔が赤くなっていくのを感じた。

それからすぐにちゅっと音を立てて、浮竹が口から指を抜いた。
少しだけ、指と唇との間に糸が紡がれて。
その光景に色々と恥ずかしくなり、
これ以上ないほど一護は頬を染める。


「ほーら、止まった。絆創膏貼るか?」


そんな一護の顔色など全くお構いなしに、
浮竹は得意げに笑みを浮かべた。
「なんだ?」


オレの膝に頭を乗せてオレを見上げるそれに問いかける。


「すこし、疲れた」


眉を顰めて、しかし微笑みながら
手のひらをオレの頬まで伸ばす。
冷たい指先がツツッと触れる。
かと思えば手のひらで右頬を包み込まれて
その親指が目元を撫でた。


「冷たい」


オレの頬を包んだその手に、
自分の手のひらを重ねる。


「スーツ、しわになるぜ」
「お前がアイロンかけてくれるんだろ」


楽しげにそう言い返す。
なんとなく恥ずかしくなって、
オレは頬を包む手を頬から外すと身をぐぃっと折って
楽しげに両端が小さくあがった唇に口付けた。
一瞬、それは驚いたように目を大きく開いたが、
すぐに薄っすらと唇を開いて、オレの頭に手をまわした。





「それで、夕飯とお風呂、どっち先だ?」

「とりあえず今は、もうちょっとこのまま…、」
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