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※現パロ、一護6歳、浮竹さん28歳(?)




「もう帰っちゃうの?」


玄関先で、オレはうきたけさんを見上げて言った。
うきたけさんは男なのに、髪の毛が長い。
長さは、肩よりすこし長いくらい。
それで、まだ若い(と思う)のに髪の毛が真っ白だった。
あと、背がたかい。
父さんも高いと思うけど、うきたけさんも高い。
父さんよりも細いから、余計そう思うのかもしれないけれど。


「ああ、お前のお父さんもまだ帰ってきそうにないしなぁ」


うきたけさんはしゃがみこんでオレの頭を撫でた。
よく見ると、うきたけさんの目の色は緑色で、
なんとなく不思議な感じがした。
その目がキュッと細くなる。


「また明日くるよ、一護」


そう言って笑うけど。
もっと、今日あったこととか、楽しかったこととかを話したいのに。
うきたけさんの顔を見ていられなくて、俯いてしまった。


「一護…、そんな顔されたら帰れないだろう?」


下唇をくっと噛んで、うきたけさんの目を見る。
うきたけさんは、ん?と首をかしげた。


「明日も絶対来る?」

「もちろん」


うきたけさんはオレの頭を叩くと、すっと立ち上がった。
ふわっといい匂いがした。


「いいこだ。じゃあまた明日な」


そう微笑むと、うきたけさんはくるりとオレに背を向ける。
それはとても大きくみえた。


「うん、またね」


オレはうきたけさんが見ていないのを解っていて、それでも小さく手を振った。
うきたけさんは背を向けたまま、手だけひらひらと振ると、
玄関を出てぱたんとその扉を閉じた。
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「そんなに心配してくれてたのか?」


浮竹は枕元に、すとんと座った一護に問う。
その濃い琥珀色の瞳が、今にも揺れ落ちそうになっていた。
浮竹は内心、やりすぎたかな、と苦笑する。


「おいで」


布団から腕を出す。
浮竹の長い指が一瞬戸惑って、そして一護の頬に、目元に触れた。


「今にも泣きそうな顔をしているお前を、放ってはおけないさ」


そして、浮竹は何を思ったか一護を布団の中にひっぱり込む。
思ったよりも一護はすんなりと布団の中に雪崩れ込んだ。
掴んだ一護の手が、思ったよりも冷たくて驚いたけれど。
自分のために、手さえ温めずにここまで走ってきたのかと思うと、
浮竹は口元が緩むのを感じた。


「熱、あったんじゃねぇのかよ」


動揺した姿を見せるのが悔しくて、一護は顔が浮竹に見えないようにと、
浮竹の胸元あたりを見て、そう言った。
そんな一護の髪を弄びながら浮竹は悪びれる風でもなく答える。


「お前がきたから体調が良くなった」


数秒間があり、言葉の意味を理解した一護は、
浮竹をぐっと睨んだ。


「つまり、仮病ってことか…? あんたなぁ、人がどれだけ――」


叱る一護の言葉にかぶるように、
浮竹は、普段のそれからは想像できないほど弱弱しく呟き囁いた。


「だけど、一護。お前がいないと俺は本当にどうにかなってしまうんだ」
「愛している」と囁けば、
真っ赤になるそれを見て多分自分は、
楽しんでいるような気がする。



「ッ…もわかったから、ちょっと離せ」


腕の中で、一護が不機嫌そうな声で言う。
不機嫌そうな声ではあるが…、顔を見なくてもわかる。
たぶん一護は恥ずかしくて耳まで赤くさせている。
そこまでわかっていても俺はそれを離さない。


「何故?俺は離したくないんだが」


さらに腕に力を込めると、一護は観念したかのように、
微力ながらも俺の胸を押していた手のひらをきゅっと丸めて
着物を引っ張るように掴んだ。


「一護?」


ぐっと一護の耳に唇を押し付けて、そして名前を呼んだ。
一護はビクリと肩を震わせて着物を掴む力を強めた。


「だぁーっ!! それやめろっ!」


気に食わないことをされた猫のように、
ブワッと毛を逆立てるようにしてそう怒る。
しかしそれでも力いっぱい突き放そうともせず、
その手はただすがるように着物を掴んだままで。
それがなんとも可愛くて、愛おしい。


「一護、愛してる」


脈絡もなく囁く。それはいつものことだけれど。
そのたびに一護はギュッと全身を固くさせて
けして俺の顔を見ようとはしない。

意地が悪いだなんて、今まで言われたことはなかったけれど、
一護に触れて、初めて言われた。

少しだけ腕の力を弱めて、耳元に寄せた唇を離して、
一護の顔を見ようとした。
一護は俯いたまま、顔を上げない。
どうしたもんか、と少し考えて、
名案とは思えないけれど、一つ案が浮かんだ。
俺は一護の手をスッと退けると中腰になる。
そのまま顔を上に向ければ、一護の顔があった。
これで一護の顔は見れた。
案の定、顔は真っ赤で、俺がそれを面白そうに笑うと、
一護は子どものように俺を睨んだ。


「愛してる」


睨んでいた目がビクリと大きくなる。
そしてすぐに、その濃い琥珀色の瞳はそっぽを向いてしまう。


「一護は俺のこと嫌いなのか?」


不安げにそう呟く。
不安など微塵も感じていないと言うのに。
俺も卑怯な手を覚えたものだ、そう頭の中では自嘲を漏らした。


「そんなことあるわけねぇだろ…」


ややあって一護は小さく呟く。
にやけそうになる口元を必死で笑顔で取り繕った。
そして泣く子をあやすように、優しい口調で問いかける。


「じゃあ、愛してる?」

「…愛してる」


いい歳して大人げない、そういわれてしまえばそれまでだが、
それでも一護の口からその言葉が聞けるのであれば
なんだってしてしまいそうで。

中腰のまま、すこし背筋を伸ばしてそのまま拗ねる唇に唇を重ねた。
「浮竹隊長って、嫌いなものとか苦手なものとか、そういうものあるんですか?」


書類の束を胸に抱え前を歩く浮竹に、同じく束を抱えた清音は訊ねた。


「嫌いなものとか苦手なもの、か…うーむ…」


首をひねって考え込むと、浮竹の歩く速度が少し落ちた。

一護が現世出張に行ってしまったために、
小椿、清音の三席両名はここ数日、忙しく動き回っていた。
予定では今日が、一護が出張から帰ってくる日で、
浮竹は朝から張り切って仕事を片付けていた。

ようやく速度の落ちた浮竹の足に、清音は小さくため息をついた。
そもそも清音から見て浮竹は、見上げるほどに身長差があるのだ。
腰の位置だってまったく違う。
そんな男に早歩きで歩かれては、小柄な清音はすぐに置いていかれてしまう。
そんなに黒崎副隊長が帰ってくるのが待ちきれないんだろうか。
呆れ半分、悔しさ半分、清音は複雑な表情を浮かべた。


「清音は、なにか苦手なものはあるのか?」


答えに行き詰った浮竹は清音を振り返って訊ねる。


「え?あっ、えっと…、小椿とか…」


いきなりの質問にびっくりした清音は百面相のように
あわただしく表情を変えてそう答えた。
そんな清音の様子がおかしいのか、浮竹は喉の奥でクッと笑う。


「な、なにがおかしいんですか隊長…」


恥ずかしそうに膨れると清音は浮竹を見上げた。


「ああ、いやすまん」


そんな清音の顔もおかしかったが、
浮竹は漏れそうになる笑みを一生懸命かみ殺して言った。
そのあと、進行方向に顔を向きなす。


「で、隊長の苦手なものってなんですか?」


書類を抱きなおし、こほんと咳払いをすると清音は改めて
浮竹に訊ねた。


「そうだな、苦手…というよりは弱点なんだが…」


一拍置くと、浮竹は言った。


「一護だな」


やっぱり。清音は判りきってることを聞いてしまったなと
また小さくため息をついた。
雨乾堂へと続く渡り廊下。
そこには浮竹がぽつんと座っていた。
その廊下に腰をおろし、
薄緑色の着流しを太ももまで捲り上げて、
ちゃぷちゃぷと楽しげな音を立てながら、
まるで子どものように水の中に足を投げ出して
そして「ううん」と声を立てると、
空に向かって両手を突き出して伸びをした。


「あったかいなぁ~、ぽかぽかする」


そのまま後ろにすとんと体を倒すと、
その体の上を影が覆った。


「い、ちご?」


そのままぐいっと目線を上に上げると、
なんとも怪訝そうに眉を顰めた一護が居た。
一護は頭をかいて、そしてその場にしゃがみこんだ。


「なにしてんだよ、風邪引くだろ、んなことしてたら」


浮竹はぐっと近くなった一護の顔をまじまじと見つめる。
一護の濃い琥珀色の瞳がすこし細くなった。


「ひなたぼっこ」


そう言いつつちゃぽんと足元で音を立てる。
ゆらゆらと周囲を泳いでいた鯉がササッと逃げた。


「ひなたぼっこって…。確かに今日は暖かいけど」

「一護も暇なら一緒にひなたぼっこするか?」


マイペースに話しかける。
けして浮竹だって暇ではないだろうが、
しかしそこまで言うなら体調は万全、
仕事はほぼ片付いているんだろう。
一護は少し考えると小さくため息をついて浮竹の隣に移動した。
死覇装のままなので水の中に足をつっこむことはしないが、
ゆっくりと腰を下ろした。


「あと三十分したらひなたぼっこ終了だからな」

「三十分な」


浮竹は楽しそうに復唱する。
機嫌の良さそうなそれを見て、
なんとなく、一護は寝転がったままの浮竹の額にキスをした。
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