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「なんで抱かないんだって言ってんだよ」


すこしつっかかるような言い方を、一護はした。
浮竹は困ったように眉をひそめる。
そして一護の方へ向き直すと
なだめるように優しく名前を呼んだ。


「一護、」


落ち着かせようと手を伸ばす。
一護はそんな浮竹の態度に奥歯を噛み締めると、
その手を掴み引いた。

そしてそのまま雪崩れこむように浮竹の胸に飛込むと、
驚いた表情に変わった浮竹のそれに口付ける。


「…!?」


さらにびっくりして、浮竹は思わず押し返しそうになったが、
必死に深く口付けようとする一護に、
浮竹は、――何を思ったかそれを受け入れるよう口を薄く開いた。

拙いそれは、口付けと呼ぶには幼すぎて。

浮竹が少しでも舌を動かせば一護はビクリと睫毛を震わせる。
洩れる吐息が甘く色付けば、浮竹の手を握る力が強くなる。
ねとっとした水音が響けば、苦しそうに眉根を寄せる。

深いキスなんて、自分からはしたことも無いくせに、
それでも、一護は口付けをやめない。

しかたなく浮竹は、自分から唇を離した。
そして一護の口元を親指で拭うと困ったように微笑む。

一護は不満気な、けれど怯えたような目で、
浮竹をすがるように見た。


「お前なぁ、そんなに震えてたら頼まれたって抱けないだろう」


苦笑しながら一護の頭を撫でる。
一護は浮竹の手を離すと、ばつが悪そうにその優しい視線から逃げた。


「不安…なんだ」


不意に一護が口を開く。


「…優しいから」


ちいさく肩を震わせると一護は俯いた。


「一護…?」

「怖いんだ、わからねえんだよ、あんたは誰にでも優しいから…。
 証が…欲しかったんだ。恋人だって証が…。」


一護は浮竹の羽織にシワが出来るほど強く胸元のそれをギュッと、
まるで幼子のように掴んだ。
浮竹は目を見開く。そして少し戸惑ったあと、一護の頭に手を置く。


「バカだな、俺はお前が好きなんだって、何度も言っただろう?」


その手を頬まで下ろすと、こつん、と一護の額に額をくっつける。


「だって…」


潤んだ瞳は今にも零れ落ちそうになっていた。
浮竹は嬉しそうなため息をついて、そして口を開く。


「わかった、じゃあ今度、現世に指輪を買いに行こう」


その言葉に一護は目を見開く。
あふれそうになっていた涙など一瞬で引いてしまった。
そしてそのまま浮竹の肩に頭を預けると一護は、

「ばか」

そう呟いて浮竹の手を握りなおした。
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