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恋を、
恋をしたのはいつ以来だろう。

思えば学院に居た頃以来かもしれない。

この仕事についてからは、
人を、 恋愛、という意味で愛さないようにしてきた。

それは自分のためでもあり、
こんな体の自分を好いてくれる相手のためでもあると思っていた。
だいたい自分は恋愛やそれに関することに淡白なほうだと思っていたし、
実際これまでもそうだった。
現に恋人など居なくてもまったく問題なくこの長い歳月を過ごしてきた。

京楽に言えば病気なんじゃないか、とからかわれるけれど。

もしかしたら恋することや愛する感情すら、その途方もない時間の中で
忘れてしまっていたのかもしれない。

なのに。

自分の年齢の、半分、いやもっとそれ以上、
埋めようとも埋めきれぬ永い時間の差。
それほど歳の離れたこの少年に、

恋愛感情を、もってしまった。


「すまん、悪かった。もういいから部屋に戻れ」


いい返事など、期待していない。
きっと明日には、彼は十三番隊を抜ける。
それでいいんだ。
嫌いだと明言してくれれば、自分は楽になれる。
そう思っていたのに。


「…、本当にオレのこと好きなのか?」


その言葉に少しだけ期待が高まってしまう。


「ああ。俺は…本気だ」


むなしく微笑む。
言葉にするたび自覚する。
目の前の彼をどんなに好きなのか。
口に出すたびに何かが胸を突く。
頭では自分を嘲笑う。

彼が口を開く。



「…オレは―――」


そうしていつの間にか自分はそれを引き寄せ、
ただ、ただ本当に何もせず夜明けまで抱き締めた。
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